「長太郎はっ!あたしと宍戸くん。どっちが好きなの!?ハッキリしてよね!」

あたしが長太郎にそう怒鳴りつけたのはついさっき。

今日は久しぶりに一緒に帰る約束までこぎつけて喜びいさんで待ってたって言うのに。

部活が終わって迎えにきた長太郎の隣には宍戸くん。



















  ほ ん と う の 理 由 が  聞 き た く て  






















長太郎が宍戸くんのことをどれくらい尊敬してるか、好きでいるかはわかってるつもりだったけど、これは何かの仕打ち?

それともなに?

神様はあたしのこと嫌いなわけ?









「もういいっ!長太郎は宍戸くんと帰ればっ!」









言ったそばから後悔してる。

呆然とあたしを見る長太郎と宍戸くん。

あたしはもう逃げるしかなくて、

「…っ!」

逃げ出した。



















「…はあ」

「なに、暗いよ?」

「だって長太郎がっ!」



















「…ぷっ!そういうこと」

「…それに昨日あたしが怒鳴るばっかりで長太郎何も言わないんだよ!?…宍戸くんさえも呆然としてた。もう二人に会いたくないよ」

あたしははぁと大きな溜め息をついて突っ伏した。

「…まあねぇ…。…あっ」

「昨日電話もメールもないんだよ。あたしの馬鹿さ加減に呆れちゃったかな。…あたしのこと嫌いになっちゃったかな」

「くすっ」

「…笑ってないでなんとかいってよ」

あたしはそういって顔を上げると友達の隣に大きな人。

まさかと思って視線を上げると、長太郎。









血の気がさぁっとひいていくのがわかった。

「…い、いつからいたの?長太郎…」

小さな声でそうきくと、

「いつからって」

「昨日電話もメールもないんだよ」

長太郎の声を消すように横から友達が楽しそうに言った。









昨日電話もメールもないんだよって…。

い、一番恥ずかしいところからじゃん…。

ボッと顔が熱くなって、恥ずかしくて、ガタンと勢いよく椅子から立ち上がるとあたしはまた昨日のようにダッシュ。









っ!」

瞬時に長太郎のあたしを呼ぶ声がする。

けどヤダよ。

逃げさせてよ。

これ以上あたしに恥かかせないでよ。









「…っ!」

「…っ、なに…っ!」

「……ごめん」

「え?」

教室のドア辺りであたしは捕まって振り向かされる。

素直に長太郎の顔を見ようとしないあたしに、長太郎はすぐに謝った。

あたしは単純だからすぐに顔を上げて長太郎を見た。









そしたら。

少しだけ頬を染め、視線は教室内に向かってる。

え、とあたしも教室を見るとみんながニヤけながらあたしたちを見つめていた。








「…ここじゃちょっと。屋上まで。いいかな?」

照れ笑いを浮かべて長太郎はそう言った。

そしてさりげなくあたしの肩を抱いた。









「あのさ…っ」

「…なに?」

いつも長太郎の横には宍戸くんがいたから、久しぶりに二人きりになって、なんだか気まずい。

妙に緊張して、二人ともチラチラ相手を見つめるだけで目をあわせることができなかった。









「あの、昨日は俺…っ」

「…」

「すいませんでした」

「…え?」

「宍戸さんを連れていったりして」

「…うん。あたしは長太郎と二人で久しぶりに帰れるって、凄く嬉しかったのに。…長太郎は違うんだなって思ったらなんか凄く悲しくて、でもなんか憎たらしくなっちゃった」

「…先輩…」

「謝るくらいなら、昨日宍戸くんを連れてきたほんとうの理由を聞きたい」

意地悪する気はないけれど、長太郎の気持ちを確かめたくて、あたしはそう聞いた。









「それは、その…。…先輩とふたりでいたくないとかじゃなくて…だけど二人でいると凄く緊張して…」

「うん」

「すいません、なんか、先輩に嫌な思いさせて。」

「うん」

「嫌いになんて絶対になりませんから。だから俺のこと、嫌いにならないでください」

「…長太郎…」

「それに俺、そうやって先輩に名前で呼ばれるの凄く好きなんです。宍戸さんとは違います」

「…」

「宍戸さんは先輩として尊敬できる大切な人だけど、俺が本当に一番大切なのは先輩でっ!」

「…長太郎…」

真っ赤な顔をして一生懸命自分の気持を言葉にしようとする長太郎はなんだか凄く可愛らしくて。

あたしは長太郎の言葉を遮って名前を呼ぶと、そっと一歩長太郎に近付いてキュッと頭を胸につけて抱き締めた。









「っ、先輩!?」

「ねえ長太郎」

「…な、なんですか?」

慌てふためいているような彼を気にもとめずにあたしは続けた。

「大好きっ!」









そう伝えたあたしに、長太郎も

「…俺もです」

そういってやり場のなかったらしい腕はあたしの背中に回って、あたしを強く引き寄せた。









穂高まな