ちいさな恋が始まる予感











放課後、図書委員であるは返却された本を本棚に戻していた。

「えーと、これは此処…」
しゃがんで本を棚に入れる。

「次は……あっち」
立ち上がり、あるべき場所へと目指す。





*

一方、鳳は宍戸の付き添いで図書館に来ていた。宍戸は授業で本が必要らしいが、鳳が手伝おうとしたら宍戸に断られ、鳳は宍戸が探し終えるまで、ぶらぶらと館内を歩いていた。
部活であまり来てなかったと思いながら、館内を廻っているその時、ある少女に目がいった。





*

「…え、高い……」
次戻す本は一番上の棚。しかしの身長では全く届かない。は台が近くにないか周りを見渡したが無く、仕方なく椅子を持ってこようとした。

「もし良かったら俺が戻しましょうか?」
は振り向いてみると、背の高い少年が立っていた。は何か言おうとしたが、その前にその少年が本を一番上の棚に戻してくれた。は彼を見上げた。顔立ちが良さそうで、でも甘いかんじが漂う彼。は見入った。すると、その少年はの視線に気付いた。

「他、ありませんか?」
は少年の声にハッとして無いと言った。すると、その少年はにっこり笑い、その場所を後にした。





「……かっこいい」



少年が去った後に零れた言葉、静かな図書館の中、幸いにも周りに誰もいなかったが、こだまするようにの中で何度も響いた。










*

「…ヤッバ」
何事もなかったように少女に接したが、鳳の中で、何かが高鳴っていた。
あの時、少女が鳳を見上げた時、鳳はドキッと胸を弾ませた。背が高い故、女子は見下ろすが、今のようなことは今のクラスの女子ではなかった。





*

あの人、何て名前だろう





また来ればあの子に会えるかな










小さな恋心が芽生えた。