晴天。 空は、何の迷いもない青。 けど、俺は今、困っています。 部活の時間。 慈郎先輩を探しに行ったきり、戻ってこない先輩。 テニス部のマネージャーで、俺の恋人だったりする。 何十分も戻ってこないと、さすがに心配。 ちょうど俺も手が空いたから、先輩を探しにやってきた。 そしてこの有様。 裏庭の ちょうどいい陰を作っている木に 寄りかかって寝ている先輩・・・の膝の上には慈郎先輩。 おかしい。 こんな光景・・・。 どうして彼女の膝の上に、彼氏でもない男の頭が乗っているんだろう・・・。 浮気・・・じゃない。 だって、先輩はいつもこうなんだ。 無防備というか、天然というか。 俺というものがありながら、他の人に優しすぎる。 とくに慈郎先輩には、甘い。 先輩が他の男の人と仲良く接するたび、俺がどんな気持ちか、わかってるんだろうか。 ふと、先輩のほうに視線を戻す。 幸せそうな寝顔。 ・・・絶対わかってないんだろうな。 でも・・・先輩の寝顔、可愛いなぁ・・・。 ずっと見ていたい・・・。 って、そうじゃない。なんとかしなきゃ。 「先輩」 「・・・ん・・・」 眠りが浅かったのか、俺がちょっと呼びかけると すぐに起きた。 「長太郎・・・」 「おはようございます」 「おはよう・・・」 寝ぼけ眼で、目覚めのアイサツに応じる先輩。今すぐ抱きしめたい。それほど愛しい。 でも・・・膝の上には慈郎先輩。 俺的には一刻も早く 膝の上の慈郎先輩を退けてほしい。 それを目で訴えるけど・・・ 「・・・なに?」 先輩は、こんな様子。 そんな先輩に俺は、溜息ひとつ。 「それはこっちのセリフです。何してるんですか?」 「何って・・・え、あぁ・・・。慈郎ちゃん?」 「・・・なんで膝枕してるんですか」 「なんでって・・・慈郎ちゃんに、してって言われたから」 はぁ・・・。 「先輩は、彼氏じゃない男の人でも、してって言われたら膝枕しちゃうんですか?」 「・・・ごめん。慈郎ちゃんがあまりにも可愛かったから、つい・・・」 反省してるのかしてないのか・・・。 ほんとは呆れるとこだろうけど、 はにかんだ笑みを浮かべる先輩を、どうしても可愛いと思ってしまう。 「・・・取りあえず、慈郎先輩を退かしますよ」 「うん・・・」 慈郎先輩の頭を先輩の膝の上から降ろす。 それでも全く起きる気配のない慈郎先輩は、ある意味スゴイと思う。 まぁ、そんなことは今はどうでもよくて・・・ 「先輩」 「ん?」 「もう、こういう事しないでください」 俺は、切実な気持ちで言った。 だけど、先輩から返って来た返事は、 「ごめんね、長太郎。・・・わたし、ヤキモチ妬かれるの好きなの」 意外なものだった。 まず。 先輩は、こういう事すると俺がヤキモチ妬くって わかってたんですね・・・。 そして。 ヤキモチ妬かれるのが好きだなんて・・・俺はどうなってしまうんだ。 とても困る。 困惑する俺をよそに、先輩は、 「なんかね、ヤキモチ妬かれると・・・わたし愛されてるなぁって実感できて、幸せなの」 笑顔でそう言う。 幸せ・・・か。 先輩が幸せなら、俺も幸せだ。 だけど、こればっかりは・・・ 複雑な気持ち。 「でも・・・」 それを悟ったのか、先輩はこう続けた。 「でもね・・・長太郎が悲しいなら、もうしないよ?」 嘘偽りのない笑顔。 それに安心する間もなく、 「たぶん」 実に心配な言葉が聞こえた。 先輩が他の人に優しくするたび、 俺はヤキモチを妬く。 でも、それは、 先輩の言うとおり、 先輩を愛してるからこそ。 だからこの先、嫌でも何度もヤキモチを妬くだろう。 でもそのたびに、俺は 先輩の気持ちが俺から離れないように、 先輩が他の人に とられないように、 おいかけて つかまえて 抱きしめます。 |